
神々の山嶺(下) (集英社文庫)
夢枕獏
集英社 / 2006-10-18
この本について
仕事でも日常でも、「わかっているのに言葉にできない」ときってありますよね。頭のどこかでひっかかったまま、結論も出ないまま、ただ持ち運んでしまう感じ。捨てれば軽くなるのは分かっているけれど、実際にはそんなに単純じゃないし、抱えたまま進むしかないことも多い。僕もよくそこで止まります。 『神々の山嶺・下』は、山の物語でありながら、この“抱えたまま歩く”感覚を極端な環境の中で描き切ってくれます。例えば、人は何かを持ちながら進むしかないという一文に、自分の生活の重さがそのまま投影されて、妙に納得させられました。あるいは、欲しいものがあるなら自分の手で掴みにいくしかないという言葉も、勢いではなく、積み重なった疲労や迷いの中から出てくるリアルさがあって、変な押しつけ感がないんです。高所での疲れ方や判断力の鈍り方が細かく描かれる分、「努力すれば何とかなる」みたいな話とも違い、できない時は本当にできないという現実も同時に突きつけられます。 読み終えて残るのは、勇ましいメッセージではなく、自分の足で一歩ずつ運ぶしかないという、静かだけど強い感覚。登りきるかどうかより、その途中に何を見て、何を手放せずに持っていくのかがじわじわ効いてきます。 自分のペースでしか進めないことに後ろめさを感じがちな人に、特に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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