
春琴抄 (角川文庫)
谷崎 潤一郎
集英社 / 2015-12-01
この本について
仕事でも人間関係でも、相手との距離の取り方に迷うことって多いと思います。踏み込みすぎても重いし、離れすぎると大事なものを取りこぼす気がする。その揺れが続くと、自分の感情の置き所さえ分からなくなることがあります。 『春琴抄』を読んでいると、その揺れとはまったく別の次元で、ただ一人に向けて生ききった佐助の在り方が立ち上がってきます。たとえば「春琴の瞳の光を一度も見なかったことを後年に至るまで悔いていない」という一節。普通なら喪失として扱われる出来事が、彼にとってはむしろ関係を濁らせないための“救い”になっている。この価値観の転倒に触れると、人と関わるときに自分が何を求めているのかを、改めて静かに問われます。 また、献身とか忠誠という言葉では片付かない複雑さも印象的です。春琴の激しさや矜持、時に残酷に見える振る舞いに対して、佐助は「対等にならない」ために自分をより低く置く。その選び方が幸せかどうかは読み手に委ねられていますが、自分の感情を一つに決めつけない態度は、現代にも通じるところがあります。 誰かとの関係に“正解”を求めすぎて疲れている人に、そっと効いてくる物語だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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