
陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫)
谷崎 潤一郎
三和書籍
この本について
日々、部屋を整えてもどこか落ち着かないとか、便利さを追うほど生活の手触りが薄くなる気がするときがあります。明るくて機能的なはずなのに、気持ちの置き場だけがどこか宙づりになるあの感じです。僕も仕事道具をアップデートするたびに、効率と引き換えに何かを置いてきている気がして、ずっと説明のつかないモヤモヤを抱えていました。 『陰翳礼讃』を読んで救われたのは、「なくしてしまったもの」の正体が、実は光そのものではなく、光と影のあいだにある“余白”だったと気づけたことです。例えば、漆椀の縁がほんのり汗ばむ一瞬の描写や、金蒔絵が暗がりの中でかすかに光るさまは、便利さとは無関係のところで人が安心を感じる理由を思い出させてくれます。また、明るさを求めるあまり四隅の蔭まで消してしまう現代の照明への違和感を示してくれるおかげで、どうして仕事場に落ち着かなかったのか、自分の中で言語化できるようになりました。 これは、西洋か東洋かといった文化論だけの話ではなく、日々の生活で「なんかしっくりこない」感覚を抱えている人が、自分の感受性の立ち位置を見直すための本です。便利さの中で疲れやすい人や、静けさに救われる瞬間がある人にはとても刺さると思います。
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