
日本のデザイン-美意識がつくる未来 (岩波新書)
原 研哉
この本について
最近、仕事でも生活でも「なんとなく複雑なものに追われている気がするけど、何を手放せばいいのか分からない」という声をよく聞きます。僕自身も、効率とか合理性に寄せすぎて、肝心の“感覚”がどこか置き去りになっている瞬間があります。そんな時にこの本を読むと、物事を見る角度がゆっくり変わっていく感じがありました。 印象的なのは、技術やデザインの話をしているようでいて、人間の欲望や暮らし方を丁寧に見つめ直す視点が随所にあることです。たとえば「シンプルとは、複雑さと向き合った末に生まれるものだ」という指摘は、日々“そぎ落とす”ことばかり意識していた自分にとって、かなり腑に落ちるものでした。また、伝統工芸が衰える理由を「物の魅力」ではなく「味わう暮らしの余白」に求める視点は、仕事でも生活でも、表面だけ整えても意味がないよな…と静かに刺さります。 結局のところ、この本は「未来をつくるのは技術だけではなく、美意識という資源だ」と語ります。大げさな話に聞こえるかもしれませんが、空港の床を磨く人の丁寧さと、先端テクノロジーの精密さが地続きだという説明は、不思議と現実感があります。自分の仕事にもその感覚をどう重ねられるか、読みながらずっと考えていました。 ものづくりに限らず、「暮らしや仕事の質をどこで立て直せばいいか迷っている人」に静かに効いてくる本だと思います。
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