
ヒキコモリ漂流記
山田ルイ53世
マガジンハウス / 2015-08-31
この本について
最近、自分の人生をどこから語ればいいのか分からなくなる時があります。家族とも友人とも微妙に距離があって、同じ場所にいるのに別の時間を生きているような感覚。善意を受け取れなかったり、誰かの「普通」が自分にはまったく解けない問題に見えたり、うまく説明できないモヤモヤが積み重なるあの感じです。 『ヒキコモリ漂流記』は、そういう曖昧なつまずきを無理に前向きに変換しないところが救いになります。例えば、親との関係を「公的な付き合いしかしてこなかった」と気づく場面は、自分の家庭のぎこちなさを思い出す人も多いはずですし、「善意は拒絶されないと思い込んでいる」というくだりは、誰にでもある小さな傲慢を丁寧に暴いてくれます。さらに、「人生が余った」という表現のまま立ち止まっている時期が描かれているのも、無理に成長物語へ回収されないリアルさで、こちらの呼吸が楽になります。 それでも、娘の誕生で「人生が足りない」に変わっていくプロセスは、劇的ではなくても、少しずつ視点が動いていくことの現実味があります。自分の影響が呪いになるんじゃないかと怯えながら名前をつける場面なんて、過去の自分に負い目がある人ほど刺さると思います。 「ちゃんと生きられていない時期が長い」と感じている人にこそ、安心して読める一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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