
死の鳥 (ハヤカワ文庫SF)
ハーラン エリスン and 伊藤 典夫
この本について
仕事でも人間関係でも、自分が何者として扱われているのか分からなくなる瞬間ってありますよね。期待された役を演じているだけなのか、本当に自分の意思で動いているのか。締め切りやルールに追われていると、気づけば「時間に仕える側」になっているような感覚すらあると思います。 『死の鳥』の抜粋を見ていると、そういうモヤモヤに反応して保存したんだろうなと感じました。たとえば、どんな名前や立場を与えられても、奥の方に残っている火花だけは自分のものだという視点。あるいは、愛情や善意があるはずなのに、それが制度や立場の中で歪んで見えてしまう関係性。そして、人が国家や組織の「方針」に従わなかっただけで敵として扱われてしまう構造。どれも日常の延長にあるようで、ちょっと目をそらしたくなるテーマだと思います。 この本が効くのは、そうした「なんとなく感じている違和感」を物語の形で突きつけてくるところです。時間に支配される社会が、たった七分の乱れで軋む描写を読むと、普段自分がどれだけ無自覚にそれを受け入れているかに気づかされますし、憎むべき存在を憎めないまま受け入れてしまう人間の弱さと複雑さも、どこか他人事ではなく見えてきます。読み終えると、今の自分が従っているルールや役割を少し引きで見られるようになるはずです。 自分の「輪郭」がぼやけている気がする人に刺さる一冊だと思います。
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