
坊っちゃん
夏目 漱石
三和書籍 / 20210610
この本について
仕事でも人間関係でも、「正しいことを言っているはずなのに伝わらない」とか、「筋を通したいだけなのに、妙に損な役回りになる」という場面ってありますよね。周りの“理屈”や“空気”に合わせた方が楽だと分かっていても、どうしても飲み込めないことがある。その感覚に居心地の悪さを抱えている人はけっこう多いと思います。 『坊っちゃん』を読むと、そのモヤモヤに変に答えをつけてくれるわけじゃないんですが、視点がちょっと動きます。例えば、赤シャツのように論理や肩書きで人を動かそうとする人物に対して、坊っちゃんが「人間は好き嫌いで働くものだ」と言い切る場面があります。正論でねじ伏せることが正しさじゃない、という当たり前のことを、妙にまっすぐ思い出させてくれるんです。また、清がお世辞のように見える言葉をかけても、素直に受け取れない坊っちゃんの不器用さが、自分の不器用さとどこか重なる人もいるかもしれません。 そして一番刺さるのは、正直に生きる人ほど損をするように見えて、周囲から子ども扱いされたり軽く扱われたりするあの感じです。でも、この物語ではその「損」が一概に悪いものとして描かれていません。むしろ、世の中の理屈が通じない場所で自分の感覚を保つことがどういうことなのか、少し落ち着いて眺められるようになります。 正直でいたいのに、社会の理屈と折り合いがつかない人に刺さる一冊です。
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