
中国侠客列伝 (講談社学術文庫)
井波律子
講談社 / 2017-02-10
この本について
仕事でも人間関係でも、「正しさ」と「現実」のあいだで身動きがとれなくなることがありませんか。筋を通したい気持ちはあるのに、場の空気や損得勘定が頭をよぎって、結局どこにも踏み切れない。僕自身、そういう場面でいつも足が止まりがちです。 『中国侠客列伝』を読んでいると、そんな迷いの正体が少し見えてきます。登場する俠者たちは、正義感に酔っているわけでも、英雄として描かれるために突っ走っているわけでもなく、むしろ等身大の人間らしさを抱えたまま、それでも「ここだけは外せない」という一点を選び取っている。たとえば、口止めされたことで逆に誇りを傷つけられた田光や、普段は温厚なのに決定的な場面で爆発する劉備、無名の弟を闇に葬らせまいと名乗り出る姉の姿などは、理屈よりも人としての芯がどう作用するかを具体的に見せてくれます。 読みながら、正しさとは何かよりも、「自分が何に対してだけは裏切れないか」を考えるようになりました。歴史のなかの俠者たちは世界を救っていないことも多いし、判断を誤った例もあります。それでも、彼らの行動の背景にある迷い方や踏み出し方は、現代の僕らと地続きなんだと思わされます。社会の枠外に置かれる者が、ときにいちばん真っ直ぐに義を貫こうとするところも、身につまされるポイントでした。 「正しさに疲れているけど、自分の芯だけは見失いたくない」という人に静かに刺さる本です。
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ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
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