
岳飛伝 三 嘶鳴の章 (集英社文庫)
北方謙三
集英社 / 2017-01-25
この本について
仕事でも人間関係でも、「どう振る舞えばいいか正解がわからない」と立ち止まる時があります。強くあろうとすると不自然になるし、かといって情を捨てきれるわけでもない。冷静さと覚悟の間で揺れる感じ、けっこうしんどいんですよね。 『岳飛伝 三』の抜粋を読んでいると、その揺れをごまかさずに抱えたまま進もうとする人物が、次々と出てきます。情を捨てきれない辛晃、負けを嚙みしめながら胆を据えていく兀朮、覚悟というより「もう死んでいる」と言い切る交渉人。それぞれ迷いの形は違うのに、どこか静かな強さに触れる感覚があります。読んでいて、強さって「迷わないこと」じゃなくて、迷いながらも立つ場所を選び続けることなんだな、と少し腑に落ちました。 この巻が効いてくるのは、まず、他人の覚悟や矜持の見え方が変わること。次に、自分の中の弱さや情が、ただの欠点じゃなくて判断の支えにもなるんだと気づけること。そしてもうひとつ、歴史や立場の違いを越えて相手を尊重する態度が、どれだけ交渉を動かすかを実感できるところです。抽象論ではなく、具体的なやり取りの中でそれが立ち上がってくるのが、この作品のすごさだと思います。 刺さるのは、「強さの形をひとつに決めきれずにいる人」。迷いのままでも前に進める感触を、少しだけ思い出させてくれる巻です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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