
日本の伝統 発酵の科学 (ブルーバックス)
中島春紫
この本について
食べものに気をつかいたいのに、結局いつも同じものを選んでしまう…とか、「発酵が身体にいいらしいけど、実際どう違うのかよく分からない」というモヤモヤ、けっこうあると思います。僕も納豆を毎日食べながら、「これって本当に健康に効いてるのかな」とどこか半信半疑でした。 この本を読んでおもしろかったのは、見た目も栄養成分表もほぼ変わらない大豆が、納豆菌や麹に触れるだけで“消化しやすさ”という別の価値を手に入れるところです。数字に出ない変化が体に効いてくる、という視点は、食べ方を考えるときの基準を静かに更新してくれます。また、鮒鮓のように「腐敗と発酵の境界が文化で決まる」という話は、食の好みを単なる好き嫌いじゃなく、土地の歴史や人の工夫の積み重ねとして見られるようになり、味噌や醬油を手に取るときの感覚がちょっと変わります。 さらに、大豆を枝豆にしたり、豆腐にしたり、味噌にしたりと、形がまったく違うのに「消化をよくする」という一本の線でつながっているのも発見でした。何気なく食卓に置いているものの裏に、雑菌を避けるための熟練の操作や、微生物を育て続けてきた長い試行錯誤があることを知ると、普段の料理にも少し丁寧さが戻ります。 食べものに興味はあるけど、健康や文化の話を押しつけられるのは苦手…そんな人にしっくりくる一冊だと思います。
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