
革命前夜 (文春文庫)
須賀 しのぶ
文藝春秋 / 2018-03-09
この本について
うまくやれていると思っていたことが、別の場所に行った瞬間まったく通用しなくなる。自分の「箱庭」が世界に開かれていないだけなんじゃないか、と気づくのはけっこうつらいですよね。逃げたいし、でも逃げたら一生後悔するともわかっている。あの感じに覚えがある人は多いと思います。 『革命前夜』の抜粋を眺めていると、読者が惹かれているのは華やかな音楽描写よりも、「自分の殻が壊される瞬間」や「正しさの基準が国や立場で揺らぐ感覚」のほうなんですよね。たとえば、技術はあるのに誰の心にも届かない音。何かを奪われたまま戦わなければいけない焦り。相手の呼吸を感じられないと音楽にならないという事実。こういう“身に覚えのある痛み”が静かに積み上がっていく。 この本が効くのは、物語の政治的背景よりも、音楽を通して「自分はまだ閉じている」と気づかされる場面がやたら多いところだと思います。人との距離の取り方、声の届かせ方、誰かの痛みを知らないまま踏み込んでしまう怖さ。そういう実感が物語に散りばめられていて、読んだあとに自分の生活のほうが少しだけ変わるタイプの作品です。 刺さるのは「努力してきたはずなのに、どこかで壁にぶつかっている人」。音楽小説というより、殻の破り方についての小さな気づきがいくつも置かれている本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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