
これはペンです(新潮文庫)
円城塔
新潮社 / 2014-03-01
この本について
最近、仕事でも生活でも「一度やったことをまた繰り返す意味って何なんだろう」と考えることが増えました。同じ作業を続けるのが虚しく感じたり、逆に過去の選択をやり直せないことに焦りを覚えたり。頭の中が散らかっているときに『これはペンです』を読むと、物事の「繰り返し」や「手順」や「記憶」について、少し別の角度から眺め直せます。 この本の面白いところは、きれいに答えをくれるわけではなく、むしろ叔父や父の記憶のように、ところどころ齟齬がある世界そのものを読者に体験させてくれるところです。たとえば、料理や音楽のように同じことを続ける人間のふるまいを、登場人物が驚くように見つめ直す場面。自分が普段「当たり前」だと思っている行動にも、ちゃんと理由があるのかもしれないと気づかされます。そして、可能性には「手順」があり、道が鎖されることもあるという考え方に触れると、今の自分が感じている行き詰まりも、単に道筋の問題なのかもしれないと思えてきます。 記憶を都市に配置する話や、もっともらしいのにどこか歪んだ街の描写も、曖昧な過去を抱えている自分の感覚に近くて、読んでいて変に安心しました。論理で割り切れないものを抱えたまま生きている人には、妙にやさしい一冊です。 世界の整合性に疲れたとき、あるいは自分の記憶や選択にモヤモヤしているときに手に取ると、ひっそり効いてくるタイプの本です。こんな人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
読書の順序
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