
サンデル教授、中国哲学に出会う (早川書房)
マイケル サンデル, ポール ダンブロージョ, and 鬼澤 忍
この本について
ときどき、自分の意見が周りとずれている気がして、「調和したいけど同化はしたくない」という微妙なラインで立ち止まることがあります。正しさを主張しすぎると衝突するし、引きすぎると流されるだけになる。そのあいだで揺れている人は多いと思います。 この本が面白いのは、正義や自由といった西洋の大きな概念をいったん横に置きつつ、「どう折り合いをつけて生きるか」という現場の感覚を儒家思想と一緒に考えていくところです。正義が万能の基準ではなく、社会の状態によっては「礼」や「仁」のほうが空気を整える力を持つかもしれない、という視点は、正しさで殴り合う空気に少し疲れた身にはしっくりきます。また、調和を求める君子も、ただ周囲に合わせるわけではなく、むしろ固く同調することを避ける存在だ、という説明が、日常の人間関係にそのまま持ち込める感覚でした。 もうひとつ響いたのは、個人のアイデンティティが社会関係の中で形づくられるという話です。完全に自分だけで完結する主体なんて実際にはいなくて、関係の中で少しずつ輪郭が出てくる。その前提に立つと、「自分らしさを守る」と「周囲と関わる」は対立しないんだな、と落ち着きます。 正義・自由・調和みたいな抽象的な言葉に振り回されがちな人に刺さる一冊です。
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