
この本について
仕事の知識として読んだはずの本が、読み終えた瞬間にはもう手元からすり抜けていく感じがあるんですよね。理解した気にはなるけれど、いざ使おうとすると何も残っていないような不安。難しそうな本に出会うと「今の自分にはまだ早いかも」と棚に戻してしまう、あの気持ちもよく分かります。 『読書論』は、そんな迷いに対して妙に肩の力が抜ける視点をくれます。一度読んだだけで分からなくて当然で、むしろ再読三読してようやく「全体」がつかめるものだと言い切ってくれる。難しい箇所に出会っても、そこで立ち止まらず読み進めていいという許しもある。そして本ばかりに頼ってしまう癖への注意も、この時代に読むとかなり効きます。書かれていることを鵜呑みにする前に、自分の目で見て、自分の頭で考えることを忘れない。読んだらそのまま放置せず、せめて何かひとこと書き残すだけで、理解がまるで違うという感覚も、本好きには心当たりがあると思います。 すぐ役に立つ本ばかり求めてしまいがちな今こそ、「時間をかけて効いてくる読書」の価値を思い出させてくれる一冊でした。古典や少し難しめの本に向き合いたいけれど踏み出せない人に、静かに刺さると思います。
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