
翻訳の授業 東京大学最終講義 (朝日新書)
山本 史郎
株式会社朝日新聞出版 / 2020-06-12
この本について
翻訳の文章を読んでいると、「なんでこんな言い回しになるんだろう」とか、「原作の“声”ってどこまで残ってるんだろう」と、じわっとモヤモヤが湧くことがあります。自分の読み方がズレているのか、そもそも翻訳って何を基準にして判断すればいいのか、よく分からなくなるんですよね。 この本は、そのモヤモヤをいきなり解消してくれるわけではないのですが、視点が一段深くなる感じがあります。たとえば、英米の小説作法が“全知の神の視点”で語り手の主観を排除する文化だという話は、訳文の距離感の違いを腑に落ちる形で理解させてくれます。また、「同化」と「異化」という二項対立をただの理論として扱うのではなく、日本の翻訳文化がそもそもどんな前提で成り立ってきたか、歴史の流れで説明してくれるので、自分が普段“自然だと思っていた日本語訳”がどんな土台に立っているのかが見えてきます。さらに、訳者による微妙な解釈の違いがどこで生まれているのかを、具体的な文の比較で見せてくれるので、「翻訳は言語の置き換えじゃなくて、世界の見方そのものの転換なんだ」という言葉の重みも伝わってきます。 原作の“声”や“視点”がどう変換されているのか気になる人、あるいは翻訳を読みながら違和感の正体をつかみきれずにいる人には、とても刺さる一冊だと思います。自分の言語感覚のクセも含めて、読み方そのものが少し書き換えられる本でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
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