
いまこそ「小松左京」を読み直す (NHK出版新書)
宮崎哲弥
NHK出版 / 2020-07-10
この本について
最近、世界のニュースを見ても、自分の立ち位置がよく分からなくなることが多いです。国とか社会とか歴史とか、そういう“大きな枠”の中で自分はどう生きているのか、考えるほどぼんやりしてくる感じ。そんなモヤモヤに触れていると、ふと物語を読む意味ってなんだろう、というところまで戻ってしまいます。 宮崎哲弥さんの『いまこそ「小松左京」を読み直す』は、その混乱を無理に整理するというより、別の角度から灯りを当ててくれる本でした。小松左京が扱っていたのは、国家や文明が揺らぐ瞬間だったり、人類がどこへ向かうのかという途方もない問いだったりしますが、宮崎さんはそれを「神話類」の現代的な継承として読み解きます。SFを空想科学の枠に閉じ込めず、世界の構造と人間の意味をつなぐ物語として位置づける視点は、自分の悩みの“スケール”自体を変えてくれる感覚がありました。歴史から置き去りにされたような感覚や、いまの日本の「くにはあっても国家なし」という曖昧さをどう扱うかについても、無理に答えを押しつけずに考える余白が残されています。 読み終えると、自分の不安が消えるわけではないけれど、別の地図を手に入れたような安心があります。大きな物語が失われた時代に、どんな物語を頼りにして生きるかを考えている人に刺さる一冊です。
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