
地下鉄に乗って 新装版 (講談社文庫)
浅田次郎
講談社 / 2020-10-15
この本について
最近、人との距離感がよくわからなくなることが増えました。親しいはずなのに踏み込めない時もあれば、逆に、一歩踏み込んだ瞬間に相手の表情がふっと曇ることもある。過去や立場を抱えたまま、現在の関係をどう扱えばいいのか…そんなモヤモヤを抱えたまま日々を過ごしている人は多いと思います。 浅田次郎の「地下鉄に乗って」を読むと、その迷いに少し輪郭がつきます。抜粋にもあるように、見知らぬ相手に突然話しかけられた時のとまどい、父の執務室に近づくことすら避けてしまう心のざらつき、闇市の青年がふっと見せるはにかんだ笑顔。どれもドラマチックな場面に見えて、実は「人と向き合うときの揺れ」を丁寧に書いたシーンなんですよね。時間をさかのぼる物語ではあるけれど、そこで描かれるのは過去の再現ではなく、自分が避けてきた関係に触れる時の温度や痛みです。 読んでいると、あの時なぜ距離を置いたのか、なぜ素直になれなかったのか、そんな自分の動きが少しだけ読み解ける気がします。劇的な変化をくれる本ではないけれど、心の中のほこりをそっと払ってくれるような感触があります。 過去の誰かとの関係に、今さら触れにくさを感じている人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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