
苦役列車(新潮文庫)
西村賢太
新潮社 / 2012-04-20
この本について
人と関わるとき、相手の「腹の底」がふと見える瞬間ってありますよね。自分のほうにも黒い部分があるのは分かっているのに、妙にざらついた感情だけが残る。頭で割り切ろうとしても、どこかにモヤモヤが残ったままになる。その感覚をどう扱えばいいのか分からないまま、大人になってしまった人も多いと思います。 『苦役列車』は、そのモヤモヤをきれいに整理してくれる本ではありません。むしろ、読みながら「分かるけど…きついな」と息が詰まるほど、登場人物のどうしようもなさが真正面から描かれています。抜粋を見ても分かるように、学歴や教養への劣等感、人に対する被害妄想めいた苛立ち、くだらないプライドのせいでうまく距離が取れない自分…。ああいう感情をこんなにも率直に書く小説は、なかなかありません。 読むと、他人の薄っぺらさに腹が立つとき、自分の卑屈さのほうも同じくらいみっともないことに気づかされます。そして「人間関係って、綺麗ごとだけでは到底やっていけない」という当たり前に、少しだけ冷静に向き合えるようになります。人を見下すインテリ的な態度も、極端な劣等感も、どちらか一方が正しいわけではなく、どちらも生きていく上での不器用さとして描かれているのが、この小説の効き方です。 他人との距離感がうまくつかめず、心の奥でいつもギシギシしている人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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