
ルビンの壺が割れた(新潮文庫)
宿野かほる
新潮社 / 2017-08-22
この本について
人を見ていて、「どこまでがその人の本心で、どこからが状況に追い込まれた結果なんだろう」と考え込むことがよくあります。誰かの行動にざらっとした嫌悪を覚えつつ、自分だって同じ立場ならどう動くのか分からない。そんな揺れを抱えたまま日々を過ごしている人は多いと思います。 『ルビンの壺が割れた』は、その揺れを容赦なく突いてきます。読者が保存している抜粋を見ると、病気に意味を見出そうとする心の弱さや、「善良な人でも機会があれば犯罪者になる」という一文に、何か思い当たるものがあったのではないでしょうか。登場人物たちは善か悪かではなく、ただ状況に押され、少しずつ境界線を踏み越えていきます。その描き方が妙に現実的で、自分もどこかで同じように判断を誤る可能性に気づかされます。 また、この物語の「手紙」という形式が、相手の言葉をどう捉えるかで世界が反転してしまう怖さを際立たせています。読み進めるうちに、相手の言葉を信じること自体がどれだけ危うい行為なのかを、じわじわ実感させられました。誰かを誤解した経験がある人には、特に刺さるかもしれません。 人間の弱さや偏りを、少し距離を置きながら見つめ直したい人に向いている一冊です。自分の中の“見たくない部分”に光が当たる感覚がありますが、その分、読み終わると妙に静かな余韻が残ります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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