
余命10年 (文芸社文庫NEO)
小坂 流加
文芸社 / 2017-05-15
この本について
社会人になって何年か経つと、「このままでいいのかな」と急に不安が襲ってくる時があります。選択肢は昔より減った気がするし、周りは先に進んでいるように見えて、ふと自分の行き場が見えなくなる。私もその感覚に何度もつかまります。 『余命10年』を読んで印象的だったのは、茉莉の言葉が“特別な境遇の人の話”にとどまらず、日常の焦りや孤独と地続きだということでした。何かを手にすれば不安が消えるわけじゃない。好きなものに囲まれていても、自由を与えられても、それでも行き場がない瞬間がある。そういう本音を、誰にも言えないまま抱えている人には、茉莉の揺れがまっすぐ刺さると思います。 この作品が効いてくるのは、まず“焦燥と現実のバランス”をどう扱うかという視点です。叶えられなかった夢を前に「しがみつくより、切り捨てて笑って過ごす方が自分らしい」と気づく場面や、逆に「もう一度だけ描いてみる」とペンを取る瞬間があって、その振れ幅が今の自分の選択を考えるヒントになります。もう一つは、“社会との距離感”がやけにリアルだということ。誰でもない第三者から「君は大丈夫」と言われたかったり、ニュースや同世代のドラマが急に遠く感じたり、そういう孤立の感覚に名前がつくような読書体験でした。 日々なんとなく胸がざわつく人、自分だけ取り残されている気がする人には、そっと寄り添ってくれる本です。
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