
殺戮にいたる病 (講談社文庫)
我孫子武丸
講談社 / 2017-10-13
この本について
日々生きていると、ときどき「人の内側ってどこまで分かるんだろう」と不安になる瞬間がありませんか。家族でも友人でも、目の前の相手の本当の気配がふっと途切れるような感覚。分かったつもりでいたのに、実は全然知らなかったのでは…というあのざわつきです。 『殺戮にいたる病』の抜粋を見ていると、多くの人が刺さって保存するのは、残虐さそのものより「目の前の人間が、いつのまにか別の相貌を帯びていく瞬間」なんですよね。母が息子の部屋のごみ袋に気づいたときのあの温度差や、本人の中で静かに膨らんでいく歪み。これは極端な物語ではあるけれど、日常の中にある“気づきたくない違和”をデフォルメしたようにも感じました。 この本が効くのは、相手を理解したつもりになってしまう自分の癖に、少しだけ光を当ててくれるところです。相手の行動よりも、声に出さない欲望のほうが先に動くことがあること。そして、家族や近しい存在ほどその変化を直視しづらいこと。物語として読みながら、自分の観察の粗さや「分かったつもり」をそっと揺さぶられる感覚があります。 じっくり人の心の“影”を覗いてみたい人、あるいは自分の中の説明しきれないざらつきを言語化したい人に向いている一冊だと思います。極端な設定ではあるけれど、その奥にある人間の輪郭が妙に現実的に感じられる作品です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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