
NHK「100分de名著」ブックス 法華経 誰でもブッダになれる
植木 雅俊
この本について
ときどき、自分の「生まれ」や「属性」みたいなものに振り回されてしまうことがあります。仕事でも人間関係でも、言葉で貼られたラベルに疲れてしまったり、そこから抜け出せない感じが続くときがあります。知識でどうにかなる問題じゃないのはわかっているけれど、視点をまるごと変えるきっかけはほしい。そんなときに、この本がけっこう効きました。 面白いのは、釈尊自身が「差別って、言葉が勝手につくった幻だよ」とはっきり言い切っている点です。人間同士に本質的な違いはなくて、ただ誰かが作った名前に私たちが縛られているだけ。そう聞くと急に肩の力が抜けて、いま抱えている劣等感や比較のクセが、絶対の真実じゃないと思えるようになるんですよね。そして『法華経』が伝える「誰でもブッダになれる」という感覚は、自己肯定の押しつけではなくて、他者も同じように貴い存在だと気づくところまでセットになっている。自己否定と他人へのとげとげしさって、じつは同じ場所から来ていたんだなと腑に落ちました。 もうひとつ、この本は「お経ってそもそも何を言っているのか」を、漢訳の歴史から丁寧にほどいてくれます。千年以上、意味を知らないまま音だけを唱えてきたんだよ、という話を読むと、遠い世界の教えだと思い込んでいたものが、急に手触りのあるものとして近づいてくるんです。 自分の「当たり前の前提」が重く感じてきた人に静かに刺さる一冊だと思います。
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