
別冊NHK100分de名著 集中講義 ドストエフスキー 五大長編を解読する
亀山 郁夫
この本について
最近、人の「善悪」ってどこまで自分で判断できるのか、正直わからなくなることが多いです。仕事で決断するときも、家族に何か言うときも、正しさを基準にしているつもりが、実は状況に押されているだけだったりします。そういう曖昧さに向き合おうとすると、現実の重たさだけが残ってしまう感じがあるんですよね。 この本は、そんなモヤモヤに直接答えをくれるわけではないのですが、ドストエフスキーの人物たちが抱える「揺らぎ」を丁寧に読み解いていく中で、自分の曖昧さをそのまま置いておける感覚がありました。例えば、ラスコーリニコフの中で革命思想と終末論が二重写しになるような、どうしようもなく矛盾した思考の動きをそのまま追いかけていく視点は、こちらの混乱ごと受けとめてくれる感じがあります。また「意志の物語」と「運命の物語」という二つのレンズは、自分の行動がどこまで選択で、どこから流されているのかを考えるきっかけになります。さらに「神の沈黙」や「黙過」の話に触れると、理不尽に名前をつけられるだけで、少し呼吸がしやすくなるはずです。 人間の弱さやちぐはぐさを、無理に整えずに読むことができる人には、とても相性がいい本だと思います。
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