
そして誰も死ななかった (角川文庫)
白井 智之
この本について
仕事で気を張り続けていたり、人間関係で振り回されたりしていると、「自分のペースがどこにあるのか分からないな」と感じることがあります。目の前の現実を処理するだけで精一杯なのに、妙に胸の奥がざわつく。そんなときに限って、人の視線や言葉が過剰に気になったりもします。 『そして誰も死ななかった』の抜粋を読んでいると、そういう“ざわつき”に反応した人が多いのかなと思いました。深夜の料金所で眠そうに揺れている男や、ホテルの廊下で出会う顔色の悪いスタッフ、立ち並ぶアパートに嘲笑されているように感じてしまう牛男。どれも日常の延長線にあるのに、少しだけ世界がゆがんで見える瞬間が続いていきます。この小さな違和感が物語の推進力になっていて、読み進めるほど「自分の中にもこういう感覚、あるな」と思わされるんです。 この作品が効いてくるのは、世界が急にノイズだらけに思えるときに、自分の“感覚のズレ”をそのまま抱えていていいんだと気づけるところです。奇妙なキャラクターたちの会話やアナグラムの遊び心も、ただのネタではなく、現実のほころびに足をかけてくるような温度で描かれていて、読み終えるころには、モヤモヤした気分が少しだけ整理されているような感覚があります。 日常の風景がふと異物めいて見える瞬間を知っている人に、静かに刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
読書の順序
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