
鳩の撃退法 下 (小学館文庫)
佐藤正午
小学館 / 2014-11-18
この本について
仕事でも日常でも、何が現実で何が思い込みなのか分からなくなる瞬間ってありますよね。うまく説明できない違和感だけが残って、「あれ、さっきまでの自分は何を見ていたんだろう」と足が止まることがある。そんなときに、この『鳩の撃退法 下』の一部を読み返すと、妙に落ち着くというか、混乱そのものに居場所があるように思えてきます。 抜粋に残されていた“サンマの匂い”や“アスファルトのきめ”みたいな細部は、状況がめちゃくちゃなのに感覚だけはやけに鮮明で、読んでいる側の記憶まで引き出されます。現実の線引きが曖昧になる瞬間を丁寧に拾ってくれるので、自分の中の「説明しにくい体験」も否定されずに済む感じがあります。それに、“生きている人間としては僕のみ”のような語りの孤独さは、物語の謎というより、誰かにうまく取りこぼされてきたときの感触に近くて、読者の保存に残った理由も分かる気がします。 あと、作品全体の“世界のつじつまが合わない感じ”が、逆にこちらの思考のほぐしにもなります。物語としての解決を求めるより、自分の中の違和感との距離感をそっと調整してくれる本だと思います。日常のリアリティが揺らぐ感覚を持て余している人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
読書の順序
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