
冬に子供が生まれる
佐藤正午
小学館 / 2024-01-30
この本について
最近、理由のよく分からない不安に急に襲われることがありませんか。誰かとの約束を忘れている気がしたり、自分のせいで誰かをがっかりさせているような気がしたり。でも根拠はない。ただ胸の奥がざわつく。僕自身、こういう“説明できない焦り”に周期的にとらわれます。 佐藤正午『冬に子供が生まれる』は、その感覚を無理に言葉で整理しようとせず、むしろ「ああ、こういう曖昧さの中で生きていていいんだ」と思わせてくれる小説でした。記憶がすり抜けていく感触や、名前が似ている同級生たちの関係の曖昧さ、いつの間にか世界がわずかにズレていく感じ。派手な事件が起きるわけではないのに、ページをめくるたびに自分の中の“忘れている何か”が静かに揺さぶられます。トイレの水が逆向きに流れても誰も気づかない、そんな世界の微細な違和感の描き方が妙に日常と地続きで、読んだ後しばらく頭に残ります。 この本が効くのは、曖昧なままの記憶や感情に、無理に意味づけしなくてもいいという感覚を取り戻せるところだと思います。自分の中の“説明できないざわつき”を押し込めるのではなく、そっと眺められるようになる。そういう変化がじわっと起きます。 こんな人に刺さります。曖昧さに耐えるのがしんどいけれど、答えをひとつに決められないまま生きている人。
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