
鳩の撃退法 上 (小学館文庫)
佐藤正午
小学館 / 2018-01-09
この本について
仕事でも日常でも、出来事のつじつまが合わないまま時間だけが進んでいくことってありますよね。自分の中でまだ形にならない感情や、説明しきれない出来事を抱えて、それでも生活は続いていく。今回の抜粋を読んでいて、「ああ、そういう“揺れたまま”の状態をそのまま書いてくれる小説なんだな」と改めて感じました。 『鳩の撃退法 上』は、親子の会話や、ふとした比喩、思い出の中の人物像が細かく積み上がっていくのに、どこかで現実の地面がずれていくような感覚があります。たとえば、眠り続ける母の話を娘にどう伝えるか迷う父の姿や、ピーターパンをめぐる会話の噛み合わなさ。それから、人の“内がわの箱”には触れられないという比喩。どれも大げさなドラマではないのに、じわじわと心の奥で響きます。読みながら、自分の過去の会話や、言葉にできなかった感情を思い出してしまう人も多いはずです。 この本が効くのは、出来事の説明をすぐ求めてしまう自分に疲れた時や、誰かの不可解さをそのまま抱えた経験がある時です。曖昧なままでも前に進む感覚を、小説という形で受け取れる作品だと思います。特に「人の気持ちの“底”までは見えないものだよな」と日頃感じている人には、ゆっくり刺さるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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