
小隊 (文春文庫)
砂川 文次
文藝春秋 / 2022-05-10
この本について
仕事でも日常でも、気持ちがついてこないまま“やるべきこと”だけが勝手に進んでいく時ってありませんか。状況はよく分からないのに、決めごとや役割だけが積み上がって、気づくと身体だけが動いている。感情が置いていかれるあの感じに、ぼく自身ずっとモヤモヤしていました。 『小隊』を読んで刺さったのは、そのズレが極限状況の中で淡々と描かれているところでした。戦闘の恐怖でも英雄的な使命感でもなく、「質問」とだけ言って会議が進む組織の慣性とか、戦況が深刻なのに外の世界は普通にラジオが流れている温度差とか、義務だけが身体を動かしていくあの“現実の重さ”。読んでいると、僕らの日常にある小さな混乱や不安が、少し違う見え方をしてきます。逃げたくなる気持ちも、役割に従うしかない瞬間も、どちらも“変な自分”じゃないんだと静かに腑に落ちる感じがあるんです。 特に、隊員たちが怖さを打ち明けて笑い合う場面や、名前のなかった「敵」が急に実体を帯びて現れてくる瞬間は、自分の中の曖昧な感情にも輪郭ができるようでした。状況が制御できなくても、次の一歩だけは自分が踏み出している。そんな当たり前のことを、戦争小説というより“現実の記録”のような質感で思い出させてくれます。 日常の中で「判断できないまま動いている気がする人」に、そっと効く一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの88%が集中しています。
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