
火狩りの王 〈三〉牙ノ火 (角川文庫)
日向 理恵子 and 山田 章博
KADOKAWA / 2023-01-24
この本について
最近、誰かの思いをちゃんと受け取れているか、自分でもよくわからなくなるときがあります。人から託されたことを胸のどこまで引き取ればいいのか、あるいは無理して背負い過ぎていないか。その加減が見えなくなると、急に立ち位置が揺れるんですよね。 『火狩りの王〈三〉牙ノ火』の抜粋を読むと、十一歳の少女が、命をかけて自分を守った火狩りの形見を届けるために首都へ向かう場面が静かに刺さります。偉そうに強く振る舞うわけではなく、ただ「そうせざるを得なかった」子どもの歩み方に、こちらの気持ちも少し動かされる。礼儀正しい声に思わず振り返る瞬間や、幼い灯子が川から引きあげられた記憶がにじむ部分も、誰かの手に救われた経験と、その後に抱える感情の揺れを丁寧に思い出させてくれます。 この巻が効いてくるのは、誰かの行為が自分の中でどんな形で残っているのかを考え直すきっかけになるところです。無理に前向きになれと言わないし、強さを押しつけてもこない。ただ、託された思いに対して自分なりの距離を探す登場人物たちの姿が、「自分もこういうふうに歩けるかもしれない」と静かに背中を押してくれる。物語としての緊張感を楽しみながら、少しだけ心の整理も進む、そんな読み心地です。 こんな人に刺さると思います。誰かの気持ちを受け取るのが得意ではないけれど、ちゃんと向き合いたいと思っている人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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