
金庫破りときどきスパイ 〈金庫破りときどきスパイ〉シリーズ (創元推理文庫)
アシュリー・ウィーヴァー、辻 早苗
東京創元社 / 2023-04-28
この本について
ときどき、自分の「ふつう」がどこへ行ったのか分からなくなることがあります。環境が変わったせいなのか、自分が変わってしまったのか、その境目が曖昧でモヤモヤするあの感じです。頑張れている日もあれば、不意に心細くなる夜もある。そんな揺れを抱えたまま進むしかない時期って、誰にでもありますよね。 『金庫破りときどきスパイ』は、戦時下という極端な状況の物語なのに、登場人物たちの揺れ方は驚くほど日常的です。大切な人の無事を信じきれないまま信じようとする感じとか、昔と同じ音楽を聴きながら「もう戻れない」と知ってしまう瞬間とか、広すぎる屋敷に立って初めて自分の小ささを思い知る感覚とか。大きな事件の物語のはずなのに、心の温度はとても生活に近い。 読んでいて一番効いたのは、「人は変わるし、戻れない。でも、それが悪いこととは限らない」と静かに示してくれるところでした。変わってしまった自分に後ろめたさを感じていた時期ほど、この視点に救われると思います。それに、疑いと信頼のあいだで揺れる会話のひとつひとつが、自分の人間関係のどこかにひっそり重なってきます。 昔と同じに見えて、もう同じじゃない毎日を歩いている人に刺さる物語だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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