
影踏亭の怪談 (創元推理文庫)
大島 清昭
東京創元社 / 2020-10-09
この本について
最近、人の気持ちが読めないというか、「なぜあの時あんな行動をしてしまったんだろう」と自分でも説明がつかなくなる瞬間ってありませんか。誰かを助けたいとか、怖さより焦りが勝つとか、理由はあるはずなのに後から振り返ると全く腑に落ちない。ああいうモヤモヤ、整理しようにも簡単じゃないんですよね。 『影踏亭の怪談』を読んでいて刺さったのは、まさにその“説明しきれない人の動き”が物語の中で静かに積み上がっていくところでした。失踪した友人を捜すためだけに極端な計画に踏み込んでしまう若者たちの心理や、遭遇した出来事に飲み込まれていく周囲の反応が、派手さはないのに妙にリアルなんです。怖さよりも、「人ってこういう時、本当にこんな判断をするかもしれない」という納得の方が残る感じ。そして、民俗的な“耳塞ぎ”の描写や土地に残る習俗が、怪異よりも人の行動の歪みを照らし出してくれるのが面白いところでした。 読み終えてから気づくのは、怪談という形をしていても、実際に揺らいでいるのは“人の心の中の間隙”なんだということです。自分の判断の根っこがどこにあるのか、ふと足元を見直したくなるような読書体験でした。 こんな人に刺さると思います。――「怖い話より、人の不可解さに興味がある人」。
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