
黄色い家
川上未映子
この本について
仕事でも生活でも、自分だけがずっと緊張していて、周りはなにも考えてないように見えてイラッとすること、けっこうありますよね。自分ばかり責任を背負って、家族や職場の人の鈍さに振り回されて、そのたびに胸がざわつく。なのに、うまく説明もできない。私もよくそこで止まってしまいます。 『黄色い家』は、その「説明のできなさ」を丁寧に拾ってくれる小説でした。貧しさや家族のいびつさを大きな物語にしないで、身体の痛みや鼓動の速さみたいな感覚をそのまま描くから、読んでいるうちに自分の中の言葉にならないものが少しだけ動き出す感じがします。それから、金がすべてだと思い込んでいたのに、ある瞬間だけ金が無意味になる、というあの感覚の描写は、価値観の凝り固まりをほぐしてくれるところがありました。あと、生まれつきの貧しさに理由なんてない、という一文には、妙な力が抜けました。努力とか正しさじゃ回収できない現実が、たしかにあるよなと。 家族やお金のことでずっと胸のどこかが疼いている人、あるいは自分の「怒り」と「優しさ」の境目がわからなくなる人には、とくに刺さると思います。私は読み終えてもすっきりはしなかったけれど、そのかわり、自分の中で固まっていたものが少しゆるむような読後感がありました。そんな距離感の本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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