
家族シアター (講談社文庫)
辻村深月
この本について
仕事や家のことが立て込んでくると、「自分には何もないな」とふと落ち込む瞬間があったり、家族のことで気を取られて自分の時間がなくなることにモヤっとすること、けっこうあると思います。誰かに言うほどでもないけれど、心のどこかにずっと残る違和感みたいなやつです。 『家族シアター』は、そういう小さなざらつきを丁寧に拾い上げてくれる短編集でした。たとえば「人から何にもないと思われるのが怖い」という感情に、ああ自分にもこういう時期あったなと自然に向き合わされますし、親になると自分の時間が削られていく息苦しさも、誰かに代弁してもらったような安心感があります。家族を大切に思う気持ちと、どこか距離を取りたい気持ちが同時に存在してしまうあの矛盾を、無理に整理せずそのまま描いてくれるのがありがたいところです。 特別に劇的な事件が起きるわけではないのに、読んだあとで自分の家族や過去の自分を少しだけ優しく見られるようになる。本にそこまで大きな期待はしていなかったのに、「ああ、こういう見え方もあるのか」と静かに視点がずれる感覚がありました。自分の中の感情を無理に正当化しなくてもいいんだなと思わせてくれます。 家族とどう向き合えばいいのか、たまに立ち止まりたくなる人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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