
すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)
川上未映子
新潮社 / 2011-10
この本について
仕事のあと家に向かう途中、ふと「いま感じていることって、ほんとうに自分の感情なんだろうか」と迷うことがあります。誰かの文章の受け売りみたいに思えてしまったり、日常の景色が急に意味を帯びる瞬間があるのに、それを自分の言葉として扱うのが怖かったり。そんな揺らぎに触れたとき、この物語の空気がゆっくり効いてきます。 主人公が夜道で光を数えるように、ただの街並みがふっと違って見える瞬間があります。あれは特別な出来事ではなくて、気持ちの輪郭がわずかに変わるだけ。でもその「わずか」が、読みながら自分の内側でも起きるんですよね。また、自分の感情が引用のように思える苦しさに対して、この物語は「それでも感じてしまうものは確かにある」とそっと寄り添ってくれます。さらに、間違いを探し続けてしまう癖や、自分をどう扱っていいかわからないまま立ち止まる場面がそのまま描かれていて、読んでいる側もどこか肩の力が抜けていく感覚があります。 自分の気持ちを言い当てられないまま日々を歩いている人に刺さると思います。特別な答えをくれる本ではないけれど、ひっそりと灯る光を見つける感覚は、読み終えたあともしばらく残ります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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