
乳と卵
川上未映子
文藝春秋 / 2010-09-10
この本について
ときどき、自分の体や感情について「これはほんまに自分のものなんかな」と思う瞬間がありませんか。生理のこと、家族との距離、女であることへの期待。どれも日常のはずなのに、ふっと置いてけぼりを食らったみたいに感じるときがある。そんなとき、説明よりもまず「ああ、こういう感触ってあるよな」と思わせてくれる本に出会いたくなります。 川上未映子『乳と卵』は、まさにその“感触”をひたすら丁寧に追う物語です。読者が保存していた抜粋には、自分の体が勝手に変わっていく心細さや、生まれる・生まれないという根源的な問題に向き合わされる息苦しさが繰り返し出てくるんですよね。綺麗ごとじゃなく、モヤモヤの素をそのまま差し出してくれるので、読んでいて「うん、そうなるよな」と妙に落ち着いたりもする。 そしてもう一つ大きいのは、人から見られる自分と、本当に感じている自分のズレをそのまま描いていること。笑っているように見えて何も伝わっていない空気とか、相手の価値観に乗せられそうになる瞬間とか、そういう細部の痛さがやたらリアルです。物語なのに、自分の記憶の断片を拾い直しているような気分になる。 「答えが欲しいわけじゃないけど、このモヤモヤを誰かと共有したい」という人に刺さる一冊です。暴れない言葉で、でも誤魔化さずに、自分の内側を見つめ直すきっかけをくれる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
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