
吹上奇譚 第一話 ミミとこだち (幻冬舎文庫)
吉本ばなな
幻冬舎 / 2020-08-06
この本について
日々の生活に流されて、気づいたら「ちゃんと見ようとしていないもの」が増えていく時期ってありますよね。忙しさに任せて慣れてしまったのか、それともただ目をそらしているだけなのか、自分でも判断がつかなくなるあの感じ。気づくと心のまわりだけがざわざわして、世界との距離が少しずつズレていくような時があります。 『吹上奇譚 第一話 ミミとこだち』は、そういう“自分がどこに立っているのか曖昧なとき”に、そっと輪郭を戻してくれるような物語でした。周囲の優しさに気づけなくなるのは、自分のことで頭がいっぱいになっている時だという視点。見ないようにして積もらせてしまったものが、人生の足元を重くしていく感覚。そして「やってみる」ことでしか動かない何かがある、と静かに背中を押してくれる流れ。押しつけではなく、読んでいるこちらのペースに合わせて、じわっと視界を広げてくれるんです。 とくに、慣れることと見ないようにすることの違いを主人公が考える場面は、自分の生活にそのまま重ねられる人が多いはずです。気づけば同じ毎日なのに、ほんの一瞬だけ訪れる“世界の旨味”を取りこぼしていたかもしれない。そんなことに改めて気づくと、今日の景色が少し違って見えるようになります。 自分の感覚が鈍ってきた気がする人、あるいは「変わりたいまでは行かないけれど、今のままではいたくない」とぼんやり思っている人に、静かに届く一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
読書の順序
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