
平熱のまま、この世界に熱狂したい 増補新版 (ちくま文庫)
宮崎智之
この本について
仕事でも人間関係でも、「自分は何者なんだろう」とふと立ち止まる瞬間ってありますよね。やることは山ほどあるのに、手を動かしている自分と、そこに気持ちが追いついていない自分のズレが気になってしまう。私もよく、doばかりが先行して、存在そのものがどこか置き去りになっている感覚に陥ります。 宮崎智之さんの『平熱のまま、この世界に熱狂したい』は、そのズレを大げさに解決してくれるわけではありません。でも、焦りや空虚感がどこから生まれてくるのかを、無理のない温度で言葉にしてくれます。たとえば「自分がいなくなると困る実感がないまま生きる苦しさ」や、「何者かであろうとするほど存在が薄くなるねじれ」といった描写に、読んだ人が保存しているのもすごく納得で、あの感覚に名前をつけてもらえたような安心があります。 さらに、レジの金額のやり取りのような、日常のどうでもいい場面にまで視点が伸びているのがこの本の魅力で、存在の手触りってこういう細部に宿るんだよな、と気づかされます。フィッシュマンズの歌詞が唐突に差し込まれるのも、理由のない寂しさの温度をそのまま閉じ込めたようで、読んでいて不思議と落ち着くんですよね。 「強くなれなかった」と素直に言える人にほど刺さる本です。自分のペースで立ち止まったり、また歩き出したりする、その揺れ自体を否定せずにいられる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
読書の順序
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