
息が詰まるようなこの場所で (角川文庫)
外山 薫
KADOKAWA / 2025-01-24
この本について
最近、人の暮らしぶりや“幸せそうに見える誰か”を前にして、理由のわからないざらつきを覚えることが増えました。自分が落ち着かないときほど、他人の現在地が気になって、つい比べてしまう。頭では何の意味もないとわかっていても、感情のほうが先に動いてしまうんですよね。 『息が詰まるようなこの場所で』は、まさにその「比べずにいられない自分」を静かに突いてくる小説です。タワマンの階数や夫の肩書きが“情報”として流通し、誰も言わないのに序列ができていく空気。都落ちした友人の暮らしを見て安心したいという、自分でも持て余す感情。そして、スマホをスクロールしても埋まらない、正体のわからない欠落。これらを過度に dramatize するのではなく、あくまで日常の延長として描くので、自分の生活にもそのまま影が落ちてくる感覚があります。 読んでいて救われるのは、この小説が「比べるのをやめよう」みたいな真っ当な結論を押しつけてこないところです。むしろ、人が他人の物語を都合よく咀嚼してしまう弱さも、嫉妬を避けるために役割を演じながら生きてしまう苦しさも、そのまま肯定も否定もせずに置いてくれる。だからこそ、自分の中の黒い部分を少しだけ扱いやすくなる感じがしました。 他人の暮らしを見て疲れてしまう人。あるいは、比較のドロ沼から抜け出したいのに抜けられない人。そんな人には、静かに効いてきます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
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