
歴史学は世界を変えることができるか
松沢 裕作
岩波書店 / 2025-08-19
この本について
なんとなく息苦しいのに理由がつかめないときってありますよね。忙しさのせいにしてみたり、自分の気のせいだと思い込んでみたり。でも本当は、目の前の現実そのものが曖昧で、どこから見ればいいのか分からなくなっているだけなのかもしれません。そんなときに、この本の言葉が妙にスッと入ってきました。 著者は、歴史を「遠い世界の出来事」として切り離さず、私たちの生活と地続きのものとして扱います。過去の曖昧さに向き合うことで、今見えている景色の輪郭も変わってくる。たとえば、明治維新の時代に生きた人びとの不安や、競争の激しさに振り回される感覚は、現代の私たちとあまり変わらないのだと気づかされます。また、“立方体”の内側しか見えない状況であっても、角度を変えれば隠れていた構造が急に見えてくる。この視点の変化が、なんだか説明のつかない苦しさにゆっくり効いてくるんです。 歴史は希望を語るための道具ではない、と著者は言い切ります。ただ、その時代を生きた人たちの手触りをたどることで、自分が今どこに立っているのかが少しだけ把握しやすくなる。絶望に気づけないことがいちばんつらい、という言葉が妙に刺さるのは、私たちもまた同じ立方体の中で手探りしているからなのかもしれません。 今の社会の「見えにくい息苦しさ」に戸惑っている人にとって、この本は現実の捉え方を少しゆるめてくれる一冊だと思います。
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