
生きづらい明治社会 不安と競争の時代 (岩波ジュニア新書)
松沢 裕作
岩波書店 / 2018-09
この本について
気づけば「努力すればなんとかなる」を自分に言い聞かせつつ、うまくいかない日は自己責任みたいな空気にのまれてしまう。周りもみんな忙しそうで、弱音を出す場所がないまま走り続けている。こういう息苦しさって、今だけの話じゃないんだろうか……とぼんやり思うことがあります。 この本が面白いのは、明治の人びとも同じように不安と競争のなかで、自分を責めたり、通俗道徳にしがみついたり、「わな」にはまっていたと描くところです。地租改正で個人が税の責任を負うようになったり、努力=成功という価値観が浸透した背景をたどると、なぜ私たちが今も同じ思考回路に引っ張られるのかが少し見えてきます。また、当時の若い男性が、あえて「不良」っぽい振る舞いに向かった理由を知ると、個人の性格というより、環境が人を追い込む構造があるんだと腑に落ちます。 読んでいて救われるのは、「みんな迷っていたし、今の息苦しさにも歴史的な理由がある」とわかることでした。自分の不安を言葉にして人と共有しようとする著者の姿勢も、無理に前向きにならなくていいと思わせてくれます。 競争社会にどこか疲れを感じつつ、「それでも生きていく視点がほしい」と思っている人には静かに刺さる一冊です。
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