
人とミルクの1万年 (岩波ジュニア新書)
平田 昌弘
この本について
日々、仕事でも生活でも「自分の前提がどこから来ているのか分からないまま動いてしまうこと」があります。食べものの選び方ひとつとっても、なんとなく知っている気になっているけれど、背景を知らないまま判断していることは多いと思います。ミルクもその一つで、身体に合う合わない以前に、「そもそもミルクって何なのか」を知らないまま生きてきたな、と気づかされました。 『人とミルクの1万年』は、ミルクを神秘的に持ち上げる本ではなく、「人がどう生きるためにミルクを使ってきたか」を淡々と教えてくれます。乾燥地帯で作物が育たないからこそミルクに頼らざるを得なかった生活の話や、ウシが1ℓのミルクをつくるために500ℓもの血液を巡らせている事実、日本で乳文化が何度も途切れてきた歴史など、どれも自分の思い込みを静かに裏返してくれる視点ばかりでした。栄養の話ではなく、環境や技術や宗教が絡み合って、ようやく「牛乳を飲む」という行為が成立しているんだなという感覚が残ります。 ミルクを飲むか飲まないか、乳製品が体質に合うかどうかとは別に、「自分が何を前提に選んでいるのか」を見直したい人にはしっくりくるはずです。知識が増えるというより、生き物と人間社会の関係を一歩引いて見られるようになる一冊でした。
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