
隠蔽捜査(新潮文庫)
今野 敏
新潮社 / 2025-08-28
この本について
仕事で判断を迫られたとき、「正しいはずのこと」が妙に言いにくくなる瞬間ってありませんか。場の空気とか、関係者の顔とか、あとで面倒になるかも…と考えているうちに、つい本質から目をそらしたくなる。頭では分かっているのに、腹が決まらない。僕もよくあります。 『隠蔽捜査』がおもしろいのは、そんな“揺れる気持ち”を真正面から描いているところでした。竜崎は原則論を振りかざす優等生に見えるけれど、実際には自分の立場や家族のことも含めて葛藤しまくっている人です。だから、彼が「最初に本当のことを言っておけばよかった」という連鎖や、「原則を曲げた瞬間に歯止めが利かなくなる」怖さに直面する場面は、妙に自分ごととして刺さります。隠したほうが楽に思えても、結局あとで全部回ってくる…という経験、たぶん誰しもあるはずです。 もう一つ心に残ったのは、正論の扱い方です。正論を言うと浮く。でも黙ると自分が後から苦しくなる。竜崎が「正論が通じないなら世の中のほうが間違っている」と苛立ちつつ、それでも現実との摩擦のなかで判断していく姿は、日常の職場でもそのまま当てはまります。自分の言葉で踏ん張るタイミングって、こんなふうに来るんだよなと。 腹をくくりたいけど迷いがちな人に向いている本です。捜査小説としても読み応えがありますが、それ以上に、判断するときの「自分の基準」をそっと点検させてくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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