
黒革の手帖(下)(新潮文庫)
松本 清張
新潮社 / 1983-01-27
この本について
仕事でも人間関係でも、自分の中にある欲や焦りをうまく扱えずに、気づいたら判断を誤っていた……みたいな瞬間、けっこうありますよね。あとになって冷静になると「なんであんなに視野が狭くなってたんだろう」と思うのに、渦中ではまったく気づけない。そんなときに、松本清張の『黒革の手帖(下)』は、他人事ではない温度で“欲に飲まれる人間”を見せつけてきます。 刺さった抜粋を見ていると、お金への慢性的な渇望、ちょっとした色気や承認欲求で目が曇る瞬間、人に依存した途端に理性が潰れていく過程……そういう、誰の内側にもある弱さに触れているところが多いんですよね。元子という主人公の強さと危うさが同居する描写が鋭くて、「自分ならどこで足を踏み外すんだろう」と勝手に照らし合わせてしまいます。 この作品が効くのは、派手なサスペンスだからではなく、日常に潜んでいる小さな欲や油断がどう膨らむかを、極端な形で見せてくれるところだと思います。人に褒められたときの昂りや、運が向いていると思った瞬間の判断ミス、お金があるときほど危険に近づいている感覚。どれも自分の生活に落ちてくる視点ばかりです。 「自分の弱さを他人の物語を通じて見つめたい人」に刺さる一冊だと思います。読み終わったあと、少しだけ慎重になれるし、同時に人間のどうしようもなさに変な安心もあります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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