
イワンの馬鹿
レオ トルストイ and 菊池 寛
スラヴァ書房
この本について
人と関わっていると、「なんであの人はあんなに怒るんだろう」とか、「こっちは争う気なんてないのに、いつの間にか面倒な空気になっている」とか、よく分からない摩擦に巻き込まれることがあります。自分が悪いわけでもないのに、気づけば疲れている。そんなときに、この『イワンの馬鹿』の抜粋が妙に残るんですよね。 悪魔が仕掛けても、兄弟がまったく争わない場面。ここに刺さる人って、きっと「争いを避けたいのに、周りの都合で消耗しがちな人」なんだと思います。イワンの「馬鹿さ」は、何も考えていない鈍感さじゃなくて、争いのゲームに参加しないという頑固さに近い。周りが勝手に期待する“いさかいの構図”に乗らないだけで、こんなに空気が変わるのか、という気づきがあります。 この話が効くのは、まず、人間関係の摩耗ポイントが「自分の性格」ではなく、「乗らなくてもいい争いのルール」にあるかもしれないと気づけるところ。それから、相手の思惑や仕掛けを全部拾わなくてもいい、と少しだけ心が軽くなるところ。そして何より、イワンのように少し不器用でも、自分なりのペースで生きることが案外まちがいではないと思えるところです。 余計な対立に巻き込まれがちな人に、静かに効いてくる物語だと思います。
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