
この本について
最近、頭の中がいつも何かで詰まっているような感覚がありませんか。仕事や人間関係の些細なことが積もって、気づけば視界が曇っていく感じ。忘れたいことほど残り続けるし、逆に大事なことに限って曖昧になる。自分でもどう扱っていいかわからない「心の容量オーバー」みたいな状態、僕もよく陥ります。 森博嗣『四季 夏 Red Summer』に出てくる人物たちの思考は、そのモヤモヤを正面から触ってくるようでした。たとえば、記憶を手放せない少女が「消すことができない苦しさ」に悩む場面。忘れられないことって、前に進めない理由にもなるけれど、同時に自分の輪郭を作っているものでもあるんだよな、と妙に現実に引きつけてしまいます。また、人は言葉を交わすことで「通信が成立しているか」を確かめる、というくだり。意味のある会話ばかり求めなくてもいいんだ、と肩の力が抜けました。あと、人生の選択がチェスのように見えても、結局は自分が落ち着くところに落ち着くだけ、という視点も、焦っているときに効きます。 物語としての緊張感がありつつ、描かれる思考の密度が現実の私たちの悩みに静かに重なってくる一冊です。特に「考えすぎてしまうタイプ」の人には、ところどころで自分の心の形をなぞられているように感じると思います。
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