
モオツァルト・無常という事(新潮文庫)
小林秀雄
新潮社 / 1961-05-15
この本について
仕事でも日常でも、言葉にしづらい「何か」にぶつかって、モヤモヤしたまま放置してしまう瞬間ってありませんか。うまく説明できないし、言葉にすれば嘘っぽくなる気がして、結局黙り込むしかない。あの居心地の悪さにずっと付き合っている人は多いと思います。 小林秀雄の『モオツァルト・無常という事』は、その黙り込みそのものを真正面から扱います。美は人を沈黙させる、という話が何度も出てきますが、これは「何も言えないほど感動した」という軽い話ではなく、言葉の外側にあるものとどう向き合うか、という実感に近い。作者が縄文土器を割ってしまった体験を延々と語るくだりも、一見ただの逸話に見えるのに、ものを見る態度が少しずつ揺さぶられていく感じがあるんです。伝統や天才を語る部分でも、「歴史的説明」ではなく、こちら側の視線の曖昧さを問い返されているようでした。 読みながら、自分が普段どれだけ“解釈”ばかりで世界を見ているかを突きつけられると同時に、言葉にできないものを無理に整えなくてもいいのかもしれない、と少し肩が落ちる。そんな読後感があります。 表現に向き合うときの落ち着かなさや、自分の感受性をどこに置けばいいのか迷っている人に刺さる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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