
破獄(新潮文庫)
吉村昭
幻冬舎 / 2017-06-09
この本について
仕事でも日常でも、目の前のことを「こなすだけ」になってしまう瞬間ってありますよね。本当は丁寧に向き合いたいのに、気づくと心がどこかに置き去りになっているような感覚。そういうとき、自分はちゃんと人として大事なところを見られているのか、不安になることがあります。 『破獄』を読んでいて強く残るのは、極限の状況でも人が失わずにいられる尊厳のようなものです。抜粋にある、死体を事務的に扱わないようにという看守長の言葉は、状況の深刻さとは別に、目の前の人を人として扱うことへの静かな重さを思い出させてくれます。また、囚人たちが不正を働かないという描写は、環境に左右されない“自分の軸”みたいなものが確かに存在するんだと気づかせてくれます。表向きの規律とか制度とは別に、人がどう振る舞うかで空気が変わってしまう現実にも少し刺さるところがあります。 この物語のすごいところは、何かを声高に教えてくるわけではなく、ただ淡々と描かれる行動や判断の積み重ねから、自分ならどうするかを自然と考えさせてくれるところです。仕事で疲れている人よりも、むしろ「自分の誠実さをどこに置いておくか迷っている人」にしっくりくる一冊だと思います。読んだあと、自分の振る舞いを少しだけ丁寧に整えたくなる、そんな本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの14%が集中しています。
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