
楊令伝 十三 青冥の章 (集英社文庫)
北方謙三
集英社 / 2012-06-30
この本について
仕事でも人生でも、「全部わかっていなきゃいけない」「上に立つなら迷ってはいけない」と思うほど、逆に動けなくなることがあります。知ろうとしても限界があるし、責任を背負おうとすると自尊心が邪魔をする。そんな時に、楊令伝の登場人物たちの“迷いながら決めていく姿”が、妙に現実に重なるんですよね。 公孫勝が「知らないことを、すべて知ろうとするのをやめた」と言う場面や、岳飛が「自分がすべてを決めねば」と思い込み、部下を追い詰めてしまうくだりは、管理職の経験がある人なら一度は感じたことがあるはずです。完璧じゃないまま、それでも次の一手を選ばなければならない。それをこの物語は、派手さよりも“重さ”として描き切っています。 個人的に効いたのは、自分の凡庸さや限界と向き合いながら、それでも立場が人を作っていくという視点でした。力量が足りないから引くのではなく、「やるべきことをひとつずつ積むしかない」という、ごまかしのない感覚。強さではなく、持ち場をどう生きるかに重心が置かれているのが救いになります。 組織で責任を抱えがちな人、決断のたびに「自分でいいのか」と立ち止まってしまう人には、静かに刺さる巻だと思います。
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