
イスラーム教 「異端」と「正統」の思想史 (講談社選書メチエ)
菊地達也
講談社 / 2009-08-10
この本について
宗教の話って、どうしても「なんでこういう形になったの?」というモヤモヤが残りやすいですよね。とくに、一神教の教えが歴史の中でどう解釈され、どこで分岐したのかをたどろうとすると、急に霧が濃くなる感じがあると思います。僕自身、イスラームだけが特殊なのではなく、ユダヤ教やキリスト教と同じ土台を持ちながら、どこで何が異なっていったのか知りたいのに、教科書的な説明だと腹落ちしないままでした。 この本は、その霧を少しずつ晴らしてくれる一冊でした。イスラームの基本的な枠組みが歴史の中でどう「作られていったか」を、善悪の問題や預言者の後継、政治権力との関係といった具体的な場面から追ってくれます。たとえば、シーア派とその「他者」との衝突を通して教義が形づくられていくプロセスを読むと、いまの価値観が最初から固定していたわけではないことが腑に落ちます。あるいは、同じ一神教でもキリスト教が「皇帝」と役割分担できたのに対し、イスラームでは預言者が政治権力を持っていたため、まったく違う悩みに向き合わざるをえなかった、という指摘も現実的で印象に残りました。 歴史や宗教を「正しさの争い」としてではなく、人間が置かれた状況の中でどう折り合いをつけていったのか知りたい人に刺さると思います。僕にとっては、世界史の断片がようやく地続きになった本でした。
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