
幻の光(新潮文庫)
宮本 輝
新潮社 / 1983-07-27
この本について
最近、人の感情に理由を求めすぎてしんどくなることがありませんか。自分でも説明できない疲れや虚しさを、言葉で整えられないまま抱えてしまう感じです。相手の行動が理解できないときも、どこに向ければいいか分からない怒りや悲しみだけが残ったりします。 『幻の光』を読んでいて、抜粋された場面からにじむのは、まさに「理由のない感情」とどう付き合うかの息苦しさでした。人が壊れていくときの気配をただ見つめるしかない苦さや、説明のつかない喪失に引きずられながら、それでも日常を続けていく姿が静かに積み重ねられていきます。特に、精を抜かれるような病の比喩は、うまく言葉にできない心の疲れをそのまま形にしたようで、自分の中にもこういうものがあると認められるだけで少し救われる気がしました。 この物語は前向きな答えを提示してくれるわけではないのに、登場人物が見つめる夜景や海のさざ波が、不思議と読んでいる側の呼吸を整えてくれます。感情に理屈を与えようとしなくていいこと、ただ「そういう状態の人間がいる」という事実に寄り添うだけで視界が変わることを、物語の流れの中で静かに教えてくれる一冊でした。 自分も誰かも、理由のない沈み方をするときがあると感じている人に、そっと届くと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの67%が集中しています。
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